自分の脳をMRIでコントローラに。「大脑按摩」は触覚で亡霊の記憶をたどる学生作品

机に置かれた脳型ゲームコントローラへ両手で触れ、亡霊の記憶を探る様子を表現したイメージ クリエイター視点
脳型コントローラへの触れ方を、亡霊の記憶を引き出す操作へ結び付けた学生作品「大脑按摩」

中国・上海で開催された「ChinaJoy 2026」に、脳の形をした専用コントローラで亡霊をマッサージするアドベンチャーゲーム「大脑按摩」(脳マッサージ)が出展されました。

目を引くのは、柔らかなシリコン製の脳を実際に押しながら遊ぶ操作方法です。しかも、その形状には開発者本人の脳をMRIで撮影したデータが使われています。

かなり奇抜な仕掛けですが、見た目のインパクトだけで終わる作品ではありません。プレイヤーは脳に触れて亡霊の記憶を探り、最後には「どの記憶を残し、どれを消すのか」を選びます。

専用コントローラと物語がどうつながっているのか。そこを知ると、妙に忘れにくい作品である理由が見えてきます。

開発者本人の脳を再現した専用コントローラで遊ぶ

「大脑按摩」は、ChinaJoy 2026の学生作品展示エリア「Academic Game Show」に出展された、物語重視のアドベンチャーゲームです。

開発者は上海科技大学に通う大学2年生で、作品は約10週間で制作されました。

最大の特徴は、脳の形をした柔らかな専用コントローラです。開発者は大学の医学ラボで自身の脳をMRI撮影し、取得した3DデータをBlenderへ取り込みました。

コントローラ向けにモデルを調整したあと、3Dプリンタで原型を出力。さらにシリコンで型取りし、実際に手で押せる脳型コントローラへ仕上げています。

内部にはESP32開発ボードと圧力センサーを搭載。Unityと接続することで、プレイヤーが押した場所と力の強さをゲーム内へ反映します。

つまり、会場の来場者が揉んでいたのは、開発者本人の脳をモデルにしたコントローラです。思いついても、実際にMRI撮影から始める人はなかなかいないでしょう。

開発者「Light」のRedNoteプロフィールには、「大脑按摩游戏🧠-预热PV」「都来捏〖设计师本人〗的脑子🧠」「CJ学院展 捏大脑游戏首次公开游玩!」「大脑展台就位,就在明天CJ🙇🏻‍♀️」といった投稿が並んでいます。

投稿タイトルからは、予告映像の公開に加え、デザイナー本人の脳をモデルにしたゲームであることや、ChinaJoyの学生展示で初めて試遊公開することが告知されていたと分かります。

力加減と揉む場所を探り、亡霊の記憶を引き出していく

舞台は、生と死のはざまにあるマッサージ店です。プレイヤーは店の見習いとなり、訪れた亡霊の脳をマッサージしながら、生前の身の上話を聞いていきます。

この世界では、死を迎えて肉体が朽ちても、魂と記憶を蓄えた脳は残ります。そのため、登場人物たちは脳を頭に載せた独特の姿で店を訪れます。

マッサージでは、まず客が心地よいと感じる力加減を探します。

コントローラに加えた力は画面上のゲージへ反映され、適切な範囲を保つと客の気分が高まります。強すぎても弱すぎても効果がないため、意外と繊細な手つきが必要です。

適切な力をつかんだあとは、客が求める部位を探っていきます。

脳は、左右と前・中央・後ろを組み合わせた6つの領域に分かれています。刺激する場所によって反応が変わり、同じ部位でも客ごとに得られる効果が異なります。

さらに、決められた順番で部位を刺激すると、亡霊が対応する出来事を語り始めます。プレイヤーは手で脳に触れながら、断片的な記憶を一つずつほどいていくわけです。

最初の2段階を終えたあとは、特定の部位を自由に刺激し、より深い記憶を探ります。そこから、マッサージ店が担う本当の役割へ踏み込んでいきます。

一般的なアドベンチャーゲームでは、会話の選択肢や調査によって物語を読み解くことが多いでしょう。本作では「揉む場所」と「力加減」が情報を引き出す手段になっています。

専用コントローラが珍しいだけではありません。触るという操作そのものが、亡霊の記憶を探る行為になっています。

最後に問われるのは、どの記憶を消すべきか

このマッサージ店の役割は、亡霊を気持ちよくすることだけではありません。

本作の世界では、死者は完全な記憶を持ったままあの世へ渡れないとされています。プレイヤーは相手の人生を知ったうえで、どの記憶を残し、どの記憶を消すのかを決めます。

選択によって、その後の結果も変化します。

会場で試遊できたデモには、生前に不老不死の薬を完成させた薬師の女性と、彼女が飼っていたと思われる犬が登場しました。

薬師は完成させた薬を自分ではなく犬に与えていました。しかし犬は、飼い主のいない現世に未練を抱いていないようで、薬師のあとを追うように死を選びます。

プレイヤーは両者の事情を知ったあと、それぞれから消す記憶を選ばなければなりません。

別の客として登場する「キノコ人間」も、人類を救おうとして命を落とした背景を持ちます。最後には4つの記憶から2つを消すことになり、その人物にとって何が大切だったのかを考えさせられます。

苦しみにつながる記憶を消せば、その人は救われるのでしょうか。それとも、つらい記憶も含めて、その人らしさを形作っているのでしょうか。

正解を簡単に決められないからこそ、奇妙なコントローラの感触とともに、選択の重さが残ります。

奇抜な操作方法を、世界観と物語から切り離していない

脳を直接揉むような専用コントローラは、それだけでも展示会で足を止めてもらえる強い仕掛けです。

しかし、「大脑按摩」が印象に残る理由は、見た目の奇抜さだけではありません。

脳に触れる行為が、力加減を探るゲームプレイになり、記憶を引き出す物語上の行為になり、最後には記憶を消す決断へつながっています。

入力装置、ゲームシステム、世界観、テーマが一つの流れとして組み立てられている。ここが本作の面白いところです。

現時点では、一般向けの発売・配信予定、対応機種、価格、日本語対応などは確認できていません。確認できたのは、ChinaJoy 2026に展示された学生作品としての情報です。

それでも、触るための装置を自作し、その感触まで物語の一部にした発想は、学生作品という枠を抜きにしても注目に値します。

まとめ

「大脑按摩」は、脳型コントローラの見た目だけを楽しむ作品ではありません。

触る場所と力加減を変えながら亡霊の記憶を知り、最後には残す記憶と消す記憶を選ぶ。専用デバイスだからこそ成立する操作を、作品のテーマまでつなげています。

一般販売や配信については、まだ確認できる情報がありません。一般販売や配信については未発表ですが、専用デバイスでしか生まれない感触を物語へつなげた発想は、今後も覚えておきたいところです。

Sources:

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