2025年の世界ゲーム市場は、初めて2000億ドルの大台を超えました。ただし、この数字を読むときは「どの市場が大きいのか」と「どの市場が速く伸びたのか」を分ける必要があります。
ゲーム市場調査会社Newzooが2026年6月18日に公表した2025年の市場売上高は2016億ドルで、前年比9.1%増。PCは成長率12.0%で最も高かった一方、売上規模ではモバイルが1133億ドルと最大でした。
PC Gamerも6月20日にNewzooの発表をもとに報じていますが、本稿では市場数値の確認にNewzooの公開済み一次発表を優先します。あわせて、2025年中に更新された予測との差も見ながら、数字をどう判断材料にすればよいのか整理します。
1888億ドルから2016億ドルへ。市場予測は途中で更新されている
まず押さえたいのは、「2025年のゲーム市場」という同じテーマでも、公表時点によって数字が変わっていることです。
Newzooは2025年9月9日時点で、同年の世界ゲーム市場を1888億ドル、前年比3.4%増と予測していました。その後、2026年6月18日の発表では、2025年を2016億ドル、前年比9.1%増で終えたとしています。
9月予測と翌年6月の公表値を単純に比べると、差は128億ドルです。これは「以前の数字が間違いだった」というより、年の途中の予測と、その後に更新されたデータを同じものとして扱わないことが大切だと分かる例です。
市場データを見るときは、数字だけでなく「いつ公表された予測なのか」「その後に更新値が出ていないか」まで確認したいところです。
なお、Newzooの2026年6月18日付公開記事では2016億ドルの市場売上高とプラットフォーム別内訳を確認できますが、ソフト販売、追加課金、サブスクリプション、広告、ハードなどについて、2016億ドルに含まれる項目の全範囲が本文中で個別に列挙されているわけではありません。本稿でも、公開情報から確認できない範囲までは断定しません。
成長率トップはPC、最大市場はモバイル
2025年の数字で重要なのは、「PCが最も速く伸びた」と「PCが最大市場になった」は別の話だという点です。
Newzooの2026年6月発表では、PC市場は436億ドルで前年比12.0%増。Newzooのデータセットでは、PCとして過去最高の年間成長率だったと説明されています。
一方、コンソールは447億ドルで2.8%増。売上規模だけならPCをわずかに上回ります。そしてモバイルは1133億ドル、10.7%増で、3つの中では圧倒的に大きな市場です。
さらに2025年9月の予測と2026年6月の公表値を単純比較すると、モバイルは1030億ドルから1133億ドルへ103億ドル増、PCは399億ドルから436億ドルへ37億ドル増、コンソールは459億ドルから447億ドルへ12億ドル減となります。
異なる時点の推計を比較した差なので、これだけで上振れの原因を断定することはできません。ただ、「PCの成長率が最も高かった」という事実だけから、市場全体の拡大をPCだけで説明するのも適切ではないと分かります。
PCではフルゲーム販売とゲーム内課金の両方が伸びた
では、PCの12.0%増をどう見るべきでしょうか。Newzooの一次発表から確認できるのは、2025年のPC市場では複数の収益形態が伸びていたことです。
Newzooによると、PCのフルゲーム売上は前年比25%増でした。幅広い価格帯のプレミアム作品が購入を押し上げ、特定の1タイトルだけが結果を支えたわけではないと説明しています。
同時に、PCのマイクロトランザクション売上も9.1%増でした。
ここから「低価格作品なら成功しやすい」「ゲーム内課金を入れれば伸びる」とまで一般化することはできません。むしろ制作側にとって重要なのは、2025年のPC成長が一つの価格帯や一つの収益モデルだけで説明できるものではなかった点です。
市場データを企画へ使うなら、成長率だけを見るより、「何に対する支出が伸びたのか」まで分けたほうが判断材料になります。
2026年のPC成長率予測は5.3%。12.0%をそのまま延長しない
2025年にPCが12.0%伸びたからといって、翌年以降も同じペースが続くとは限りません。
Newzooは2026年のPC市場について、成長率を5.3%と予測しています。2025年より発売ラインアップが薄く、前年の比較対象も高くなったことが、成長率を押し下げる要因として挙げられています。
またNewzooは、2026年にかけて上昇したメモリなどの部品コストが、新しくPCゲームを始める人やアップグレードを考えるプレイヤーの負担になり得ると分析しています。
一方で、2025年のPCプレイ時間の64%は2019年より前に発売されたゲームが占めていたともしています。すべてのPCプレイヤーが最新ハードを必要としているわけではないため、ハード価格の上昇だけでPC市場全体を単純に判断するのも避けたいところです。
2025年はPCにとって強い年でした。ただ、その12.0%を今後の標準成長率として扱わないことが大切です。
制作側が見るべきは「規模・成長率・収益構造・公表時点」
今回の数字を制作や市場分析に使うなら、一つのランキングにまとめるより、4つの軸に分けると見通しがよくなります。
市場規模ではモバイルが最大です。2025年の変化の速さではPCの成長率が最も高く、PCの中ではフルゲーム販売とゲーム内課金の双方に伸びが確認されています。
さらに、1888億ドルだった2025年9月予測が、翌年6月には2016億ドルとして公表されたように、市場推計そのものも更新されます。
Newzooは2025年9月時点で、世界のプレイヤー数について35.8億人、前年比4.4%増と別の指標で予測していました。市場売上とプレイヤー人口は別々に測られる数字です。「売上が9.1%伸びたからプレイヤーも9.1%増えた」といった読み方はできません。
制作側でもプレイヤー側でも、市場ニュースを見るときは「最大なのはどこか」「伸び率が高いのはどこか」「何への支出が伸びたのか」「その数字はいつの推計か」を分けて確認する。この4点だけでも、数字の印象に引っ張られにくくなります。
まとめ
2025年の世界ゲーム市場が2016億ドルに達したことは、大きな節目です。ただし、そこから導くべき結論は「PCが市場の主役になった」という単純なものではありません。
PCは436億ドル、前年比12.0%増で最も高い成長率を記録しました。一方、最大市場は1133億ドルのモバイルで、売上規模では447億ドルのコンソールもPCをわずかに上回っています。
また、2025年9月の1888億ドル予測から翌年6月の2016億ドル公表値へ数字が更新された点も、市場データの読み方を考えるうえで重要です。
市場規模、成長率、収益構造、公表時点。この4つを切り分ければ、「どの市場が伸びているか」というニュースを、そのまま「どこを狙えば成功するか」という結論へ飛躍させずに済みます。
ゲーム市場の数字を企画や判断に使うときほど、見出しの大きな数字だけでなく、その数字が何を測っているのかまで確認してみてください。
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