『Death of the Reprobate』になぜ“ピンク色の牛のふん”が登場? 絵画素材の制約から生まれた奇妙なパズル

石造りの中庭で、牛とピンク色の中身が入った木製バケツが給水ポンプのそばに置かれている写真風イメージ クリエイター視点
絵画素材の制約と偶然の組み合わせから、奇妙なパズルが生まれました。

『The Immortal John Triptych』に収録される『Death of the Reprobate』には、「ピンク色の牛のふんが入ったバケツ」という、なんとも強烈なアイテムが登場します。

ただし、最初から奇抜なジョークとして計画されていたわけではありません。

開発者のJoe Richardson氏によると、始まりはマップに自然な行き止まりを作るため、既存の絵画を組み合わせて中庭を制作したことでした。背景の修正跡を牛で隠し、給水ポンプのアニメーションを反転させる。そんな小さな判断が連鎖し、最終的にはひとつのパズルへ発展したといいます。

本記事では、絵画素材の制約が、奇妙で忘れにくいゲーム体験へ変わるまでの開発過程を紹介します。

始まりは「ドアが多すぎる部屋」に行き止まりを作ることだった

ピンク色の牛のふんが生まれるきっかけは、2022年夏の『Death of the Reprobate』開発中に起きた、マップ設計上の問題でした。

Richardson氏が制作していた家の内部には、想定より多くのドアが存在していたといいます。

本作の背景は、複数の絵画を切り抜き、組み合わせることで作られています。一般的なゲームのように、不要なドアだけを簡単に消すことはできません。代わりに使える壁の絵を探す必要がありますが、広い空白だけが描かれた都合のよい絵画は、そう簡単には見つかりませんでした。

通路を増やせば、プレイヤーが何度も往復することになります。かといってループ状のマップにすると、今度は道順が分かりにくくなりかねません。

そこで必要になったのが、自然な形で行き止まりになる新しい場面でした。

つまり、あの奇妙なアイテムより先にあったのは、「どうすればマップを歩きやすくできるか」という、かなり現実的な課題だったのです。

19世紀の中庭と牛の絵が、画面の空白を埋めた

行き止まりに使える絵を探し始めてから約6カ月後、Richardson氏は博物館のカタログで、Andreas Schelfhoutによる中庭の絵画「Binnenplaatsje(1820~1830年)」を発見しました。

厳密にはルネサンス期の作品ではありません。しかし、左右の境界が明確で、床として使える広い空間があり、前の場面とつなげやすい扉も描かれていました。

行き止まりを作る素材としては、かなり扱いやすい一枚だったようです。

ただし、絵に描かれていた人物を取り除くと、今度は修正した部分が目立ってしまいます。その空白を隠すために選ばれたのが、Jacques Raymond Brascassatの「Study of a Bull(1850年)」に描かれた牛でした。

大きく、四角に近いシルエットを持ち、動かなくても不自然に見えにくい。背景の修正跡を覆う素材として、牛は都合のよい形をしていました。

物語に牛が必要だったから配置したのではなく、まず画面を成立させる必要があり、その結果として牛が選ばれたわけです。

絵画を素材にするゲームならではの、少し変わった問題解決といえるでしょう。

給水ポンプの水を反転させた瞬間、奇妙なパズルが生まれた

中庭の見た目が整うと、次はプレイヤーが操作できる仕掛けの検討が始まりました。

Richardson氏は、中庭に描かれていた給水ポンプを動かせるようにし、川の一部を切り取って水が流れるアニメーションを制作します。

そこで牛の向きと水の流れを見たとき、アニメーションを反転させ、色を変えるアイデアが浮かびました。

この思いつきは、牛に異なる食べ物を与えると、それぞれ違う色のふんが出る仕掛けへ発展します。プレイヤーはそれをバケツに集め、「ミルクシェイク」と称して前の部屋にいる子どもへ渡すことになります。

かなり悪趣味な展開です。とはいえ、単に奇抜さを狙って追加されたわけではありません。

マップに行き止まりが必要だったこと。人物を消した跡へ牛を置いたこと。その近くに、動かせそうな給水ポンプがあったこと。

ひとつひとつは別の問題に対する判断でしたが、それらを捨てずに拾い上げたことで、最終的にひとつのパズルへまとまりました。

絵画をゲーム側の都合へ一方的に合わせるのではなく、絵の構図や偶然の組み合わせから遊びを見つけていく。『Death of the Reprobate』の制作方法がよく分かるエピソードです。

『The Immortal John Triptych』は8月27日発売予定、Steamの掲載内容も確認を

『The Immortal John Triptych』は、『Four Last Things』『The Procession to Calvary』『Death of the Reprobate』の3作品をひとつにまとめるアンソロジーです。

発売日は2026年8月27日と案内されています。

未公開の削除シーンやボーナスシーン、UIと操作性の改善、拡張されたサウンドトラックなどを収録。『Four Last Things』への手動セーブ追加や、『The Procession to Calvary』でのバックフリップといった、各作品の追加要素も用意されています。

Akupara Gamesの公式ページでは、PC、PlayStation 5、Nintendo Switch、Nintendo Switch 2、Xbox Series X|S向けに展開すると案内されています。一方、Xbox StoreではXbox OneとXbox Series X|Sが対応機種として掲載されており、Xbox Oneの表記には公式ページ間で違いがあります。

日本向けのPlayStation Storeページも公開されており、PS5版と2026年8月27日の発売予定を確認できます。ただし、現時点では日本向け価格が表示されていません。

PC向けでは、現在確認できるSteamの関連ページが追加コンテンツとして掲載されており、『Four Last Things』『The Procession to Calvary』『Death of the Reprobate』のいずれかが必要とされています。当該ページでは、日本語のインターフェースと字幕への対応も案内されています。

機種によって販売形態や掲載内容が異なるため、購入を考えている方は、発売前に利用するストアの情報を確認しておくのが安全です。

まとめ

ピンク色の牛のふんが入ったバケツは、最初から用意されたジョークではありません。

ドアを減らせない。人物を消した跡が目立つ。牛のそばに給水ポンプがある。そんな制約や偶然をひとつずつ拾った結果、奇妙なパズルが生まれました。

完成した場面だけを見ると、かなり突飛なアイデアです。しかし開発過程を知ると、むしろ目の前にある素材を丁寧に観察した結果だと分かります。

『The Immortal John Triptych』は2026年8月27日発売予定です。気になる方は、各ストアで提供形態、対応機種、価格、言語情報を確認しつつ、この一風変わった制作手法にも注目してみてください。

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